インターネットのけもの

全て妄想です。

金玉は二度死ぬ

他意は無いのですが、思いついてしまったのでこのタイトルにせざるを得ませんでした。一度頭をよぎってしまうと他のタイトルが思いつかないものです。申し訳ない。小学生並みの貧困な発想しか出来ない僕をどうか許して下さい。

 

タイトルには「死ぬ」などという物騒な単語が出てきていますが、実際には僕の金玉はまだ死んでいません。ですがここ半年ほどの期間において、二度に渡って金玉から発せられる痛みに苦しめられていたのも、また事実です。今日の日記はただただ金玉が痛いだけの日記です。全く関係ないタイトルというわけでもないのですよ。

 

 

 

初めて異変を感じたのはまだ時代が平成だったころ、最後の天皇誕生日が迫っていたあたりだったと記憶しています。

普段は超健康優良児であるところの僕ですが、このときは普段と違う気配を敏感に察知していました。なんだか棒と玉で言うところの玉、学術的に言えば陰嚢、詩的に表現すればおいなりさん、有り体に言えば金玉ですね、男性のシンボルと言っても過言ではないこの部分がズキズキと痛むのです。

敏感に察知とか言ってますが、実際には椅子に座ると痛む、歩いていても痛む、寝ようと横になったらまた痛む、と明らかに尋常ではない状態だったため、これは自分の体にとんでもないことが起きているのでは…?と疑心暗鬼に陥ったものでしたが、僕は病院には行きませんでした。なぜなら、それだけ痛みを感じていてもなお、「まあそのうち勝手に治るだろう」という楽観的すぎる考えがあったからです。

 

しかし、そんな甘い考えだった僕を絶望の底に叩き落とす出来事が起こります。

一言で言うと、血が出た。

血が出た、だけでは血尿と間違えられるかもしれないのでハッキリと言いますが、精子と一緒に血が、出ました。その日もいつものようにオナニーをしていて、そろそろ果てますわと欲望の塊をティッシュに受け止めさせたところ、手にしたティッシュ(僕はいつも2枚重ねて使います)には見慣れたはずの白だけではなく、まさに鮮血としか表現の出来ない赤が一筋の光のように顕現していました。

何かの見間違い、あるいはこのティッシュはもともとこんな柄だったかな?と現実逃避を試みたのですが、時間が経つにつれて滲んでいく赤は紛れもなく血のそれで、真っ白なキャンパスに落とされた赤の直線は抽象画のようにも見えました。抽象画を見て「こんな絵がウン百万!?俺でも描けるわ!」と思ったことは誰しもがあると思いますが、今なら言えます。抽象画は簡単に描けるものではありません、血の出る努力の果てに生み出されるものなのです。

今にして思えばこの渾身の一枚を何らかの形で残しておけばよかったのですが、血が滲んでいく様子に正気を失ってしまった僕は、必殺の「何も見なかったことにしよう」を発動、普段のオナティッシュと共にゴミ箱にこの名画を叩き込んでしまったのでした。歴史の陰にはこのように失われた名画も数多くあることでしょう。

血が出てきたところにいよいよ感がありますが、それでも僕はまだ病院へ行きませんでした。疑心暗鬼は深まるばかりで、自転車の振動が悪そうだからと立ち漕ぎメインで移動したり、体調が悪いのが全ての元凶だと早寝をしてみたりと、思い込みレベルの対策しか取りませんでした。ここに至ってもまだ、「まあそのうち勝手に治るだろう」という考えがあったからです。もはや、頭の病気も併せて疑うレベルです。

 

その後はもちろん痛みが勝手に引いていくということはなく、むしろ痛みは増していくばかり。血が出てからは「また血が出たらどうしよう」という呪縛に囚われてしまい、オナニーも全然出来ていません。折しも時期は年末年始を迎える直前。下手に正月に悪化した場合、病院が空いておらず治療が手遅れに、齢26にして玉無し生活を強いられる。というパターンもありえましたので、意を決して病院へ行くことへ決めました。初めに痛みを感じてから2週間以上、血が出てからは1週間ほどが経過していました。すでに手遅れかもしれません。

ちょうどこの時は、「2018年G1観戦記」という名前の通り、2018年に開催されるG1を全て現地で観戦するという、もう二度とやりたくないタイプの遊びを誰に言われたでもなくやっていた関係で、地元大阪を離れて東京を訪れていました。継続して診察してもらうことを考えると大阪で診てもらったほうが良いのは明らかですが、正月まで大阪に帰る予定はなかったので、とりあえず重大な病ではないかだけでも確認しておこうと、ネットでサクッと調べた泌尿器科で診察をしてもらうことに決めました。

キレイな女医さんが出てきたらどうしよう?とか考えていましたが、現れたのは完全無欠におっさんでした。まあそんなものです。検尿を済ませ、診察が始まります。

当然のことですが、問診だけでは何も分からないため、一通りいつから痛いとか血が出たとかの説明を終えると、とりあえず脱いでみよっかとチープなAVのようなセリフを投げかけられ、おっさんにむけてブツを露出させることになりました。おっさんも慣れたもので、触診と称して玉を優しく触ってみたり、どこからか取り出したジェルを玉に塗りたくってレントゲンみたいなものを撮ったりと、スムーズに進行していきました。ただ、ジェルを塗りたくられた時は正直ヤバかった。何がとはいいませんが、これがキレイな女医さんとかならまあヤバかった。

 

淡々と進んだ診察の結果、どうやら僕の玉の中にはどこからか雑菌が入ってしまったようで、それが原因で「精巣上体炎」なる病気になっているとのことでした。「精巣上体炎」は読んで字の如く、精巣に病原菌が入ってしまうことで炎症を引き起こすという、まあ聞いてみればすぐ理解できる疾患だったのですが、腑に落ちない点が2箇所ありました。

まず、雑菌が入るような行為をした覚えが一切無いということです。強いて言えばオナニーくらいですが、僕はオナニーの前後にちゃんと手を洗うタイプの人間ですので、おもむろにオナニーを始めるような人間よりかは遥かに感染する可能性が低いはずです。

もう一つは、「精巣上体炎」では精子に血が混じったりはしない、ということです。この症状が病院に行くための大きな後押しになっていたのですが、どうやらこいつは今回の件とは関係無かったようです。しかしながら、血が出たというのはあの日の僕が幻覚を見ていたのでなければ事実であり、これの対処が出来ないままでは恐怖が残ります。そのあたりも先生に相談したのですが、「精巣上体炎が治っても血が出るならまた病院へ来てください」という僕でも言えるレベルのアドバイスしかなかったのでどうすることも出来ませんでした。

その後は1週間分の薬をもらい、ちゃんと1日1錠飲みなさい、薬を飲みきっても痛みが引かなければ地元でちゃんと病院にかかりなさいと指示を受け、地元でかかるときにスムーズに診察が進むようにと診察結果のメモまで書いてくれました。血が出る原因は判明しませんでしたが、親身になってくれた診察と、薬を飲んでいれば治る症状だと分かったことで僕の心はずいぶん軽くなりました。

おかげで、年末年始は、忘年会に新年会、一人でのんびり旅行とずいぶん楽しむことが出来ました。はしゃいではいましたが、先生の言葉は忘れていません。どれだけ酔っ払うことがあっても薬を飲むことだけは欠かしませんでした。そのかいあってか、もらった薬を飲み終わり、正月が明けるころには痛みもずいぶんマシになっていました。

 

しかし、そこからさらに1週間ほど経過すると、事態は急変します。まあ予想がつくと思いますが、まったく治っていませんでした。治ったような気がしていただけで、実際にはまた強烈な痛みが再発したのです。

まあ病名はもう分かっていますし、薬を飲んでいる間は確かに症状が収まっていたのですから、あとは継続して薬を飲んでいれば治るでしょう。そんな軽い気持ちで近所の泌尿器科に赴きました。

まあここではびっくりするくらい怒られた。怒られすぎて「なんでこんなに怒られなきゃいけないんだろうか」と冷静になってしまうくらい怒られた。

怒られた理由もそれなりに納得いくものだったので、こちらも言い返したりはしませんでしたが、説教じみた怒られ方、というのがあまりにも久々すぎて、何だか少し笑いそうになりました。

薬を飲み終わっても痛みが残っているなら病院へ行くべきだった、そもそも何故血が出た時点で病院へ来ないのか、遠方の病院にかかっても継続して行けないのだから意味がない、薬飲んでる時期に酒を飲むんじゃないと、説教は止まりません。

そのうち、薬出す時に酒を飲んじゃ駄目って説明しない医師はヘボ、メモの字も汚いしなんなんだ、どうせ診察も適当だっただろうから俺がしっかり見る、と最初に僕を見てくれた医師をヤブ扱いしだす始末。ここまで言うのだから、こちらの先生はさぞかし立派なのだろうと、これから受ける診察にも期待してしまいます。この先生なら血が出た原因も突き止めてくれるかもしれない!

 

蓋を開けてみると、診察結果は「精巣上体炎」、血が出た理由は分からないという、最初の先生のメモどおりの診察結果でした。なんかどこかを切っていたのかもしれないみたいなことは言ってましたが、そりゃそうだろとしか思えませんでした。あと、触診されているときには当然玉を触られることになるわけですが、この時の手付きが完全にヤンキー漫画に出てくるクルミガリガリいわせている人のそれで、滅茶苦茶痛いわ、このまま潰されるんじゃないかと不安になるわで、なんだかもう大変でした。

処方された薬も全く同じで、もはや最初の先生にケチつけてたことを謝りに行って欲しいレベルなのですが、先生はどこか満足げでした。

こちらの先生の指示通り、2週間に渡って薬を飲んでいると痛みはみるみる引いていき、最終的には治ったとの太鼓判を押していただきました。まあ治ったかどうかの判断が、問診や触診によるものではなく、2週間ちゃんと薬を飲んでいたから大丈夫だろうという、薬の性能を信頼しきったものであったところが気にはなりましたが(最後の診察は1分くらい会話しただけで終わった)、まあ痛みもほぼ無いし、先生がそう言うなら間違いなく治ったのでしょう。僕は悠々と病院をあとにしたのでした。

 

 

それから約5ヶ月後。

そこには再び「精巣上体炎」に苦しむ僕の姿がありました。

今までの文章で二度死んでるじゃないかと思われたかもしれませんが、この年末年始の出来事は1回分で、ここからが2回目です。僕もさっきで終わりだと思っていたし終わりたかったです。なんでこんなに金玉のこと書いてるんだ。

前回の火種が燻り続けていたのか、寛解したものの再度どこからか雑菌が入り込んだのかは定かではありませんが、また泌尿器科に行かねばならないようです。

一度痛みを覚えた人間は強くなれるものです。今回は痛みを感じた時点で「精巣上体炎」が再発したと判断、即座に病院へと駆け込んだのでした。わずかに不信感もあったので、違う病院にしようかな?という思いもあったのですが、結局のところ、家から近いというメリットを覆す程ではなかったため、同じ病院にしました。

 

痛みを感じてすぐに来たからか、今回は怒られることもなく、淡々と診察が進んでいきます。相変わらず金玉を握る時の手付きがクルミガリガリいわせる時のそれだったのが気になった、というか普通に痛かったのですが、予想通り「精巣上体炎」と診断されました。あと、金玉の大きさが左右で違うねとも言われました。

むしろこっちに対する食いつきの方がすごく、以前治療した「精巣上体炎」はもう興味が無いのか、いつから金玉の大きさが違うのか、痛みなどは無いか、など根掘り葉掘り聞かれました。僕としては自分の玉のサイズが違っていたという認識はなかったので、ほとんど「分からないです」としか答えられなかったのですが、それでもしつこく食い下がり、「なんで前回の診察では気付かんかったんやろ」とブツブツ繰り返していました。それはこちらのセリフです。

あと、ここにきてカルテ上で睾丸の左右を間違えていたことが発覚。僕は前回も今回も左の睾丸が痛いと伝えており、触診などもそちらを中心に行われていたのですが、カルテでは全部右の睾丸になっていました。この先生が全ての診察を行っていたので問題はなかったのですが、カルテを元に看護師に指示が出ていたらどうなっていたのでしょうか。

 

また「精巣上体炎」と診察されてしまったことについて、僕としては今までなったことがない病気に、半年という短期間に2回もかかってしまうのは、何か原因があるのではないかと思ったので、先生にそのあたりのことを尋ねてみたのですが、

「短期間の間に同じ病気になるのは何か原因が考えられますか?」

「なる人はなる病気やからね。5回、6回と来る人もいますよ」

「いや、そういうことじゃなく生活習慣とか…(6回は来すぎじゃね!?そいつホンマに治ってるんか?)」

泌尿器科に来るようなことをすればなります」

という禅問答のような有様だったため、僕は全てを諦めました。ていうか6回って…。やっぱり実はこっちがヤブだったってパターンじゃないの…?。こんな調子で繰り返される問答には絶望感を感じさせられましたが、それでも薬さえ貰えれば、それさえ飲み続ければちゃんと治るんだという希望もありました。やはり一度痛みを覚えると強くなれるものです。

 

診察はこんな調子ですすめられましたが、処方された薬は無事に前回と同じものでした。まあなんやかんやあってもこれを飲んどけば治ります。

そう思って薬を飲みだしたのが約1ヶ月前。今回も2週間分処方されていたので飲み終わったのは約2週間前ということになりますが、どうやら今回は薬の効きが悪いのか、飲み終わって時点ではまだかなりの痛みが残っている状態でした。

痛みが残っているものはどうしようもないので、最後の診察の時にその旨を伝えたのですが、問診や触診は当然のように行われず、まさかの2週間ちゃんと薬を飲んでいたから大丈夫だろうという、やはり何も大丈夫じゃない判断基準により治ったと診断されてしまいました。

じゃあこの痛みは何なんですかと聞いてみたところ、返ってきた答えは「気のせい」というものでした。そうか、気のせいだったのか。いやいや、専門家たる医師に「その痛みは気のせいだよ」って言われたら患者側は何も言えなくなるでしょ…。こんな一撃必殺みたいな論法があっていいんでしょうか。TCGなら禁止カードになるレベルでしょ。

先生曰く、痛みが続いて過敏になっているせいで、何ともない状態でも痛いと感じてしまうそうです。どうやら僕は幻肢痛ならぬ幻玉痛に悩まされているということでしょうか。この場合、玉は無くなっているわけではないというのが判断の難しいところですね。

 

 

完治していると診断されたものはどうしようもないので、それ以降病院には行ってないのですが、今でも痛みを感じる瞬間は訪れます。それは幻の痛みなのか、それとも真の痛みなのか、もはや僕には判断すること叶いませんが、いつの日か、きっと真実を知ることが出来る日が来ることでしょう。恐らくそれは三度目の泌尿器科訪問という形で実現するような気がしてならないのですが、まあまだ未来はわかりません。

金科玉条という言葉もあるように、古来から金や玉は大切に扱うものとされてきました。それはそれとして、金玉だって当然大切に扱われて然るべきです。どうか僕の金玉が無事でありますように。