GWが終わり、また日常が戻ってくる。
でもそこにあるのはいつもと同じ日常ではない。
明日からの仕事に備え、床についたのはいいものの、3時間もしないうちに目が覚めてしまった。目を瞑っていればそのうちにまた眠ってしまえるだろうと思っていたが、一向に眠くなる気配もない。
そのうちに取り留めのない考えが頭をぐるぐるとするようになり、ついには完全に目が覚めてしまった。
こうなっては仕方ないので、久しぶりに日記を書くことにする。今のような異常事態を書き留めることこそが、ある意味で日記の本分だと思うからだ。
今年のGWは例年のものとは大きく違っていた。
「Stay Home週間」などとも呼ばれ、家で過ごすことを求められる。不要不急の外出は即ち悪とされ、イベントの開催も自粛ムードに流された。
僕個人の話をしても、長期休みにどこにも出かけないというのはここ10年ほどで初めてのことだった。興味のあったイベントは軒並み中止になっていた。
今はパラダイムシフトの只中にあるのかもしれない。
この1ヶ月で変わったものは多い。会社に行くことは無くなり、休業する飲食店は増えた。飲食店以外でも、時短営業や平日のみの営業など、閉まっている時間が増えている。街からは明かりが減った。
幸いにして、僕の仕事はテレワーク可能なので5月いっぱいは在宅勤務になるが、6月以降はこれまでのように出社するようになるかと言うと、そうはならない気がしている。恐らく、この問題が解決の兆しを見せるまではテレワーク主体の勤務になるだろう。
閉まっている店たちは、いつまでも閉めているわけにもいかないので、徐々に再開していくだろうが、これまでと全く同じように営業できるかと言うと、そうはいかないと思う。
余暇の過ごし方も随分と変化した。
「オンライン飲み会」なる言葉が脚光を浴び、自宅にいながらにして楽しめるものが持て囃された。呼応するように、動画配信サービスや漫画サイトが無料コンテンツを公開した。このGW中は特にそういうものが多かった。
僕も、読書をしたり映画をみたり、友人とグループ通話をしながらゲームに興じたり、とそれなりに楽しく過ごせていた。時々、散歩にでかけたりもした。我ながら上手く暇つぶしは出来ていたと思う。
だが、このGW全体を振り返ると、どうしても「もうちょっとなんとかならなかったのか」と後悔の念に駆られる。
今年のGWには思い出らしい思い出が全く無い。
なんとなく起きて、なんとなく本を読んで、なんとなく飯を食べて、なんとなく友人とゲームをして、なんとなく映画を見て、なんとなく眠る。
起きる時間はバラバラだし、読む本は再読が多い。友人とのゲームもパターンを少し変えただけで、繰り返しみたいなものだ。気ままに過ごしていたせいで、寝ようと思ったときにはもう朝日が昇っていた、ということは何度もあった。
楽しくなかったわけではないが、もう少し違う過ごし方、楽しみ方もあったように思えてならない。自堕落さがこれ以上ないほど露呈したGWだった。
当初は、「GWはどこも出かける場所がないし、これに打ち込もう!」と考えていたことがいくつかあった。しかし、終わってみると何一つできていなかった。
今年のはじめに立てた目標を達成するために、トランペットの練習をし、スペイン語を勉強する。身体が鈍らないように室内でもできる運動を行い、新しい本に触れる。そんな夢みたいなことを考えてきた。
だが実際には、トランペットはケースから出してすらいないし、スペイン語は参考書をパラパラめくっただけ。運動なんか全くしてないし、新しい本は探すことすらしていない。僕はどこまでも怠惰な人間だった。
言い訳になるが、僕が完全に一人だったなら、この目標のためにいくらか動けていたと思う。
実際、一人のときはパラパラめくるだけとはいえ、参考書に目を通していたし、本も読んでいた。そのまま一人なら、もう少し先に進めていたのだろう。
しかし、僕は友人と遊ぶ道を選んでいた。それ自体は楽しく、否定するものではないが、今にして思うと、本来の目的から目をそらし、より楽で楽しい方に流れていっただけだ。
結局の所、一人で暇だから何か有意義に思えることをやろうとしていただけで、本来の僕は目的意識がとても低い人間だった。
もう一つ、このGWにやろうと思っていたことがある。
それは物語を書くことだ。
一次創作でも二次創作でもいい。自分の手で世界を書き出し、その中のキャラクターたちに命を吹き込んでみたかった。
これもそれっぽい設定を書き出しただけで終わった。
僕は文章を読むのが好きだ。
人並みか、それ以上には文章に触れていると思うし、自分の中で文章の良し悪しを判別出来る程度には分別もあると思う。まあこれは、あくまで自分の中で絶対的な評価を下せるというだけだが。
そんな中で、読んでいるうちに「こんな文章を書きたい」と思わせられた人が二人いた。日記を書くようになったのも、物語を書こうと思えたのも、この二人の影響は非常に大きい。
GW中、この二人の文章を再読した。震えた。
もう何度も読んでいたはずなのに、それでもやっぱり新鮮な感動があった。
自分でも文章を書いてみるようになると、この二人への遠さがよく分かった。
あんなに凄い文章は書けそうにない。
でもそれでいいのだとも思う。
その二人と同じ文章が書きたいわけでもないし、だいたいそれだとただの劣化コピーにしかなれない。自分なりの書き方で、自分が良いと思える文章を書けるようになれればと思う。
いつの間にか朝日が昇っていた。
この一週間は、このあと眠くなったタイミングで自由に寝ることが出来たが、今日からはそういうわけにもいかない。生活リズムも戻さねば。
GW中に手をつけられなかった目標については、これから再度、手をつけていこうと思う。どうせ嫌でも家に居る時間は増えるのだ。
GWが終わり、新しい日常が始まる。