インターネットのけもの

全て妄想です。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト舞台探訪記 「空の音・夢ノ彼方」

それは私がこの国に来てそろそろ8日になろうかというある日の午後のことでした。

 

こんな書き出しから始めてしまいましたが、別に夢がどうとか目標がどうとか書いたりはしません。単なる日記です。そして、これが本当に最後の旅行記です。よくもまあ誰も見てないのにダラダラと書いてきたものだ。

 

2016年9月21日(水)

 

クエンカでの粗相が響き、ほうほうの体でその後の観光を続けていた僕ですが、この頃にはすっかり体調も戻り、順調にやり残した予定を消化しておりました。やり残したことはもう殆ど無く、後は日本に帰るだけだと思っていたのですが、一つ重要な場所に行っていないことに気がついてしまいました。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」という作品は、事前にスタッフによるロケハンが行われており、そのあらましが公式サイトにて公開されています。僕はこのロケハンがあったからこそ、作品中で直接は描かれていない背景でも、なんとなく感じさせてくれる、説得力のある世界観が出来上がったのではないかと思います。ロケハンは、クエンカ・アラルコンを中心に行われており、建物は勿論、そこにある家具や、内装まで参考にしたとあります。そしてもう一箇所、アルカラ・デ・エナーレスにも行ったことが触れられています。ここには「ドン・キホーテ」の作者、「ミゲル・デ・セルバンテス」の家があり、どうやら置いてある家具や調度品を参考にしたようです。舞台探訪とは少し違うかもしれませんが、ここもまた「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」を構成する舞台の一つだと思いましたので、当初の予定にはありませんでしたが、行ってみることにしました。

 

アルカラ・デ・エナーレスはマドリード近くにあり、クエンカ、アラルコンからその日のうちに向かえなくもないですが、一度マドリードに寄ってから向かうのもいいと思います。僕もマドリード滞在中に足を伸ばしました。マドリードからは電車で1時間ほどで着くので日本に帰る前にふらりと寄ってみるのも楽しいかと思います。アルカラ・デ・エナーレスもクエンカと同じく街全体が世界遺産に登録されているような街らしいので、普通に観光にいくだけでも楽しめそうですね。

 

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駅から出ると背の高い建物がない、落ち着いた印象の街が広がっていました。どうやらこの街は大学都市として世界遺産に登録されているため、誰もが知っている名所のようなものは無いらしく、前提知識がある人が楽しめるタイプの街のようですね。まあ知識など無くても、落ち着いた街並みが好きな人にはいいんじゃないでしょうか。

 

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道中何度か遭遇したのですが、電線に結ばれた一対の靴が器用に引っ掛けられていました。最初にみたときは「一体何のおまじないだよ・・・」と思ったものですが、どうやらこれは「シューフィティ」と呼ばれているある種のアート的な要素を含む何かだそうです。何かっていうのは、本来何が目的で始まったものなのかはっきりしていないからで、ギャングや麻薬取引組織のサインとかいう物騒な説から、ただの子供のいたずらだろうという微笑ましい説まで色々あるそうです。こんな穏やかに見える街にも麻薬がはびこっているのか、はたまた微笑ましいいたずらなのか、真相はわかりませんが、知らない街で妄想を巡らせるというのも中々に楽しいものです。

 

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駅から15分も歩くと目的地に到着します。家の前ではドン・キホーテとサンチョが出迎えてくれます。二人の間に座って写真撮影をしている人たちがチラホラといました。こういう見てよし触れてよしのスポットはいいもんですね。僕も撮ろうかと思いましたが、考えるまでもなく僕は一人であり、そのへんの人に話しかけるようなコミュニケーション能力もなかったため、撮影は断念しました。

 

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近寄って見てみると結構怖い顔してました。騎士道物語を読みすぎるとこんな厳しい顔つきになってしまうのでしょうか。もっと笑っていてほしいものです。実は僕は「ドン・キホーテ」を読んだことがなく、あらすじくらいしか知らなかったのですが、彼のこの顔つきをみていると、どんな物語に出てくる人物なのだろうと興味が出てきました。日記を書くにあたり、再度あらすじを調べてみると、やはりいい感じに狂っている人物のようでしたので、いずれ読んでみようと思います。本来関係のなかった書物にまで興味をもたせてくれるなんて、ほんと「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」は偉大な作品ですね。

 

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いくらかの入場料を払って中に入りますと、うっすらと見覚えがあるよう井戸が飛び込んできました。ユミナの教会にあった井戸ですね。セルバンテスの家は吹き抜けの中庭を囲む2階建てになっており、この中庭部分は、教会の中庭部分のモデルになっているようです。家具や調度品でモデルになっているものが見つかればラッキー程度の認識だったのですが、これは嬉しい誤算でした。ただ惜しむらくは、せっかくの中庭の写真を全然撮っていなかったということです。僕は一体何をしていたのでしょうか。

 

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中庭に面した各部屋は基本的に出入り自由となっており、好きなように見学できます。何に使うためのものなのか、想像もつかないものが置かれていて、古いもののはずなのに何だか新鮮でした。解説らしい解説も置かれていないので、何に使うものだったのか、全く予想が付きません。椅子がおいてあるのを見て、「もしや砦で使われていたものと同タイプの椅子では?」と勝手にテンションを上げてしまったのですが、ぜんぜん違う形でした。この後も何度か椅子を見つけてはテンションを上げてしまうという、どう考えても学習能力が乏しすぎる真似をしてしまいました。

 

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建物内は薄暗いところが多く、僕の撮影スキルも相まってどうにも暗い写真ばかりになってしまい、不気味な写真が何枚か生産されてしまいました。これなんかは真ん中に写っている椅子が拷問器具のように見えるような気がしますが僕だけでしょうか。窓や椅子の後ろにある家具は、似たようなものが作品内にも出ていたような気がしますね。

 

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食事に使われていたテーブルでしょうか。大きさ的に考えると小隊の皆が使っていたテーブルに近いような気がしますが、作中ではテーブルクロスが掛けられていたので確証が持てません。周りに配置されていた椅子は残念ながらまた異なるものでした。壁に使われているタイルはクエンカタイルなんでしょうか。砦の食堂にもタイルが張られている箇所が一部あったはずです。食堂に彩りを与えてくれるよいタイルですね。

 

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流石にこんな皿や入れ物は作中に出てきていなかったかと思いますが、これらを収納する棚は似たような造りのものがあったかと思います。さっきから、思いますだの、はずですだの、何ともふわふわした表現ばかりになってしまっていますが、正直この辺は断定出来る素材を見つけられていないので勘弁してください・・・。でも、作品を見ていればなんとなく作中と共通する雰囲気があることは伝わっていると信じています。

 

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階段を上がって2階へと進みます。何故か全然撮っていなかった貴重な中庭の写真を、上から撮っていました。角度こそ違っていますが、教会の子供達がお祭りの準備をしていたシーンと一致していますね。柱の形状なんかも同じです。こんな場所から写真を撮っているのに、なぜ作中と同じ角度では撮っていないのか、自らの行動に疑問がつのるばかりです。

 

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2階の一部では「ドン・キホーテ」に関する展示が催されていました。文字が少なく、コメディチックに描かれているため、スペイン語がビタイチわからない僕でも雰囲気だけで楽しむことが出来ました。

 

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明らかにもうソ・ラ・ノ・ヲ・トは関係なくなってしまっているのですが、使用用途が他に思い浮かばない椅子がしれっと置かれていました。実は本来の用途が別に何かあるのでしょうか。めちゃくちゃ普通の居室らしいところにおかれていたので、まさか、こんな場所で用を足すとは思えないのですが、それは現代を生きる僕たちの常識。昔は、部屋で話しながらブリブリと排便するのがナウなヤングにバカウケだったのかもしれません。とんでもない時代です。

 

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中庭はそこまで広くないので、2階の廊下もすぐにぐるっと一周できてしまいます。中庭を見下ろせるようにベンチも置いてあったので、各部屋を回りながらゆっくり過ごしてもいいかもしれませんね。

 

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神戸守監督のインタビューにも出てきたドアノブが真ん中についた扉。こういった扉は何もここだけにあるのではなく、スペイン滞在中に何度も見かけました。たしかに、日本人からすれば奇異に映るかもしれませんが、現地の人達からすれば日常に溶け込むものであり、この当たり前に使っている人達がいるという事実が、ある種の説得力をもって、アニメというファンタジー世界において「地続き感」を感じさせてくれるのですね。

 

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最後に中庭を一枚。ほんとここまで撮っておいて何故作中と同じカットで撮っていないのか。自分の抜作っぷりには呆れるばかりです。いい忘れていましたが、中庭には管理人らしい兄ちゃんが一人おり、この人がまた中々に丁寧なナイスガイなのでした。僕がスペイン語を解さないと察するやいなや、英語での接客に切り替えてくれ、こうして中庭の写真を撮っている間も何か解説をしてくれるというサービス。残念ながら、僕は英語能力も著しく低かったために、せっかくの兄ちゃんの解説も、僕の笑顔にただただ飲み込まれていくだけという大変申し訳無い結末を迎えてしまいましたが、それすらも察したのか、「ありがとう」と日本語で締めくくってくれました。正直言ってめちゃくちゃカッコいいと思った。

 

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セルバンテスの家を後にした僕は、アルカラ・デ・エナーレスの街をぶらつき、最後に会ったドン・キホーテに挨拶をしてからこの街を去りました。思い立って来ただけではありましたが、なんとも居心地の良い街でした。セルバンテスの家以外にも見て回れそうなところがいっぱいありましたよ。

 

これで本当に舞台探訪も終わりです。「絶対に一度は行っておかねば」と思って始めた舞台探訪でしたが、実際に訪れてみると、その思いが成就されるどころか、「絶対にもう一度行っておかねば」に変わっていました。いや変わっていないとも言えるのでしょうか。幸いなことに、2020年にソ・ラ・ノ・ヲ・トファン有志によるクエンカオフが計画されているらしいので、何らかの形でそこに参加してみたいなと思います。本探訪記は2020年ソラヲフを応援しています。

 

 

行こう、夢のその先に。

たとえ、いつか世界が終わるのだとしても。

その瞬間までは、私達の未来だ。