半年以上に渡って書いてきたこの旅行記もこれで一区切りです。まあ半年以上とは言っても書いていない時期のほうが圧倒的に多いのですが。ダラダラと書いているうちに結構な分量になってしまいました。誰が読むんだこんなの。
2016年9月19日(月)
とうとうアラルコン最終日を迎えてしまいました。今日はタクシーでモティリャ・デル・パランカルまで行き、そこからはバスでクエンカに戻ります。アラルコンに来るときも同様のルートを通りたかったのですが、バスが運休していたというどうしようもない理由のためにタクシーのみで来るハメになりました。おかげで運賃が高くついたもんです。
優雅な朝を過ごせるのも今日で終わりです。
普段は軽い朝食しか摂らない僕ですが、ここではついつい食べすぎてしまいます。相変わらずチュロスと生ハムが美味しく、しめにデザートまで味わえるのですからこれ以上の朝食はそうないでしょう。あと、マンゴージュースも美味しかった。この日から今日までを思い返してみると、これ以上に豪勢な朝食を摂っていないような気がします。いつもなら画像中心のパンを一枚食べてるくらいですからね。格差がひどいもんです。
パラドールを下から見上げた図。こうしてみると本当にお城なんだなと実感できますね。
タクシーを呼んだ時間まではまだしばらくあったので、散歩に出ることにしました。それにしても、クエンカ、アラルコンと回っている間に雨がふらなかったのは幸運でした。おかげで、見て回りたかったところ全てスムーズに巡ることが出来ました。雨に濡れた街も少し見てみてみたい気がしますが、やはり初めて訪れた際には晴れている方がいいですからね。
雲ひとつ無い青空のもと、アラルコンの街は変わらず在り続けます。
城壁という人工物も、長い時間の中で自然と調和し、まるで最初からそこにあったかのような落ち着きを見せてくれます。きっとこれからも、アラルコンの街は変わらず在り続けるのでしょう。
またこの場所に来てしまいました。すっかりお気に入りです。
街の周囲を歩き回るつもりでしたが、足取りは自然とこの場所に向かっていました。アラルコンには、落ち着けるような場所が多いと思いますが、中でもここは素晴らしい場所だと思います。目立つので、同じ考えの観光客が来るのがネックですが、そんなに頻繁に来るわけでもないので、うまく時間を選べば簡単に一人になれます。ここで過ごす静かな時間は、何ものにも代えがたい素晴らしい時間となりました。
EDではカナタがここを歩いていましたね。
EDを再現した写真を撮ってみようと、リオが佇み、カナタが歩いていた塀の上を覗いてみたのですが、塀に組み込まれた石がむき出しになっており、全然平坦になっていないどころか、わざと歩けないようにしてるんじゃないかと思えるほどに傾斜がついていたので止めておきました。カナタは素晴らしいバランス感覚を持っているようです。内側に落ちるだけならまだいいのですが、外側に落ちてしまうと、最悪の場合、落ちた衝撃で意識を失い、貯水池まで転がりフカル川に浮かぶ死体になってしまうというパターンが考えられたので、この判断はおそらく正解だったのでしょう。みんなが愛するこの土地を曰く付きにしたくはありません。
「リオ先輩、みーつけた」このシーンは割とお気に入りです。
実は昨日撮りそこねていた、「リオ先輩、みーつけた」のワンシーンです。階段下で考え事をするリオと、なぜか階段を上ってくるカナタの組み合わせが妙におかしくて、好きなシーンの一つです。13話を見ているときは、「なんでわざわざ階段を上ってくるんだ・・・」と思っていましたが、実際ここに来ると上ってみたくなってしまったので、やはりソ・ラ・ノ・ヲ・トの心理描写は優れているのでは・・・?と思わざるを得ませんでした。僕はこの時23歳でしたが、精神的には未だに中学生と変わらない程度でしょうから、15歳のカナタと同じ行動をしてしまっても仕方のないことだったのでしょう。
下から眺めるパラドールには威圧感がありますね。さすが古城。
本当はもっとゆっくり過ごしたかったのですが、タクシーの時間もあることですので、荷物をまとめにパラドールへ戻ります。この2日間、様々な角度からこのパラドールを見てきましたが、道路から見るこの角度が、「絶壁に佇む古城」を表しているようで一番好きかもしれません。ここからのびる城壁、城門も併せてみられるのもいいですね。
この天蓋ともお別れです。
この部屋で過ごしたのは2晩だけでしたが、初めてこんないいホテルに泊まったので、とても新鮮なことばかりでした。パラドールを巡ってみるのも楽しそうですね。いつかはしてみたいものです。この旅を通じて、やりたい事が随分と増えたような気がします。僕はやりたい事をしに来たはずなのに、帰る頃には何故かやりたい事が増えてしまっている旅こそが、良い旅だったと思っているので、この旅は大変に良いものだったと言えるでしょう。
モティリャ・デル・パランカルまで送ってくれたタクシー。
少し早い時間にチェックアウトしたつもりだったのですが、その頃にはもうタクシーが来ておりました。事前に伝えていたとおりに、モティリャ・デル・パランカルまで頼むとお願いすると、気のいい感じのおじさんドライバーは車を発進させてくれました。目的地に近づくに連れ、「アキ?アキ?」と何度も聞いてくるようになりました。多分スペイン語でなにか聞いてるんだろうなとは思いつつも、全く理解が出来ていなかったので、とりあえず「アキ!」と返すと、車はそこで停まってしまいました。どうやら「ここでいいのか?」と聞かれていたようですね。本当はバス停付近まで行っておきたかったのですが、それを伝える手段が無かったのでまあ仕方ありません。ここからは歩いて探すことにします。
この街にも猫がちらほらいた。やはりスペインは猫が多いのでしょうか。
このモティリャ・デル・パランカルでも、やはり猫の姿をよく見かけたような気がします。この辺りの街は猫が多いのでしょうか。どの猫も程々に人に慣れているようでした。
このまま猫を見ていても良かったのですが、そんなことをしているうちにバスが出てしまってはたまったものではないので、ひとまずバス停を探します。闇雲に歩いても仕方がないので、とりあえずそのへんを歩いている人に聞こうかと思ったのですが、どうやらこの街も人が少ないのか、通りを歩いている人の姿を全く見かけません。仕方なく、適当に歩き出しましたが、10分位の間誰とも会いませんでした。運良くおばちゃん二人組に出会うことが出来たので、バス停の場所を尋ねたのですが、そこで分かったのは、どうやら間抜けな僕はバス停から逆方向に歩いてきていたということでした。それにしてもスペインのおばちゃんは親切です。こっちは「バス!バス!」しか言ってないのに、意図を汲み取って道を教えてくださるのですから。
まあせっかく教えてもらった道もある程度進んだところでパッと忘れてしまうという鳥頭っぷりを遺憾なく発揮してしまい、おばちゃん達の善意を踏みにじってしまうという結果になりましたが、そのへんにいた何かの作業員っぽい人に改めて場所を尋ねると、もうバス停は目の前にありました。ありがとう、おばちゃん、作業員の人。
バス停の外観。バスに乗りたかったらこの建物を探そう!
バスターミナルではすでに2、3人の乗客がバスを待っており、僕もそこに加わりました。バスが来るまではまだ1時間ほどあったのですが、バスターミナル内では時間を潰せるようなものはなく、辺りを散歩しようかと思ったのですが、よく考えると僕はスペインのバス事情を全く知らなかったため(時間どおりに来るのか分からない、ここは田舎だしなおさら)、仕方なくバスが来るまでお行儀よく待ち続けました。途中、隣に座っていたおばちゃんが、何事か話しかけてきましたが、当然何を話しているのかさっぱりだったため、とりあえず「クエンカ!」と返すと、何か満足したようでそれ以上は話しかけてきませんでした。こちらに来てから地名しか話していないような気がします。ごめんな、スペイン語が話せたらもっと気の利いたことも言えたと思うんだけどね・・・。
このバスでクエンカに戻ります。
1時間ほどが経ち、予定時刻を少し過ぎた辺りで目当てのバスが到着しました。ちなみに、このバスが来るまでの間、他のバスは来ていなかったかと思います。やはり全体的に本数が少ないのでしょうね。残念ながら料金がいくらだったのか忘れてしまいましたが、支払いはバスに乗ってから直接運転手に払ったような気がします。薄れゆく記憶を基にした、曖昧な情報が本探訪記のウリです。
クエンカのバスターミナルに戻ってきました。
来たときにタクシーで通ったであろう道を再び進みます。相変わらずなにもない道です。こんな場所を自転車で走破しようとか考えるやつは頭がイカれてしまっているのでしょうね。
1時間ほどバスに揺られ、クエンカまで戻ってくることが出来ました。一昨日は活気がまったくなかったバスターミナルも、今日は全部の窓口がしっかりとあいており、他のお客さんの姿も見受けられます。ほんと、日程をちゃんと考えるということは重要ですね。
手頃な値段で豊富な品数のパンが売られていました。
お昼をまだ食べていなかったため、バスターミナルからすこし歩いたところで見つけたパン屋で昼食を摂りました。ここでは、様々なパンが売られていたのですが、やはりチュロスが一番美味しかったです。チュロス最高。
本日の宿泊場所。安い割には一通り設備が揃っていたので満足です。
そのまま街中を見て回りたい気持ちもあったのですが、どうにも荷物が邪魔だったのでひとまず本日の宿へ向かいます。もう一泊パラドールをとっても良かったのですが、今日はあくまで予備日として設定していたので、クエンカにいないことも想定して新市街の安宿にしておいたのです。この選択は結果的に大正解でした。僕はこのあと巻き込まれるあるハプニングのために、結局このベッドで一夜を明かすことは出来なかったからです・・・。
旧市街側からでも時計塔は大きく目立ちますね。
荷物を置き、一休みしてから街へ繰り出します。道はまだ覚えていませんが、旧市街の方角は分かっているので、迷うことはありません。途中、視界がひらけた場所からは時計塔がしっかりと見えました。場所によってはですが、建物の隙間からパラドールが見えるところもあります。今回の旅では、ソ・ラ・ノ・ヲ・トの舞台を見るというのが目的ということもあり、旧市街を中心に回りましたが、また来る際には新市街の方にも、目を向けてみたいと思います。
サン・マテオのお祭り期間中ということで、マヨール広場は大きく賑わっていました。
旧市街に近づくと、段々と人が増えてきたと感じます。皆、似たようなTシャツを着ており、中には革袋の水筒を携えた人もいます。マヨール広場には初めてここを訪れた時とは比べ物にならない人で溢れかえっていました。そうです、今日はサン・マテオのお祭りです。正直、ここまで人がいるとは思っていなかったのですが、大人から子供までクエンカ中の人が集まっているんじゃないかというくらい人がおり、ベランダから広場に身を乗り出しているような方もいました。チラホラと持っている人がいた革袋の水筒には、どうやらワインが入っているらしく、それを飲んだり水鉄砲のように人にかけたりと、昼間からやりたい放題やっているようです。その様子は、さながら色水を掛け合う水掛けまつりのようでした。折角ですので、僕はこのまま祭りを楽しんでこようと思います。楽しかった舞台探訪機はここで一旦終わりです。
日本からスペインまで約1万km、ここまで来たかいがありました。ソ・ラ・ノ・ヲ・トにハマってから約6年半、そのモデルとなった舞台がクエンカ、アラルコンにあると知ってから、いずれは行かねばならないと思っていた土地に来て思ったことは、「やっぱり来てよかったな」でした。そして今、その気持ちは、「また行こう、行かなきゃ」に変わっています。僕がここまでこれたのは、先達がインターネット上に情報を沢山残してくれていたからだと思います。残念ながら「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」は爆発的に流行ったわけではなく、その舞台も日本から遠く離れているという、舞台探訪にはあまり向いていない作品だと思います。ですが、そんな中でも、その記録をインターネットで公開してくださっていた方には感謝しかありません。おかげさまで素敵な経験をすることが出来ました。
徒然と書き綴った、愚にもつかない旅行記ではありますが、「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」の舞台を巡りたいと考えている方の僅かな助けにでもなれば、これ以上の素敵はありません。
完