インターネットのけもの

全て妄想です。

9月15日~16日

 どうやら僕にはまともに日記を書く能力が欠如しているようですので、前回の日記では気がつけば指が勝手に訳のわからない文章を綴っていました。今回はまともに書く、書くんだ。

 

 

9/15(日)

 

 この日から友人5名と共に金沢まで1泊の旅行に行っていました。友人たちと旅行だなんて充実しすぎだろ…、と思われるかもしれませんが、実際充実しているのですからどうしようもありません。

ありがたいことに、道中全てにおいて僕が運転を任されていたのですが、前日には日付が変わるまで麻雀を打っていたことに加え、なぜか出発早々に僕以外の皆が寝る、あるいはソシャゲに夢中になって無口になってしまうという、ある種いじめのような状態が発生してしまい、僕は開いた口が塞がりませんでした。

というか同乗者の中には前日の麻雀に誘ったにもかかわらず、「旅行前に疲れるようなことはしたくないから」と断っていたものもいたのですが、出発早々に寝てるあたり、何一つ意味が分かりませんでした。

そんなわけで、ただでさえ居眠りをかましやすい僕の睡眠欲は大いに刺激され、楽しい旅行が危うく、HEAVEN'S DRIVEと化してしまうところでしたが、それでもなんとか無事に金沢へと到着することができました。スピード出しすぎてあの世まで連れ去られるところだった。

 

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食事はやけにこだわる友人がいたので任せていたのですが、どうやら餃子が美味い店があるらしく、そこへ行くことに。ただ、言っちゃあなんですが、王将の餃子の方が美味かった。よくある「観光地にある有名店だから普通でも美味いように感じるけど、実際は普段食べてるチェーン店の方が美味しいんじゃない?」って感じの味でした。誰も口には出していなかったけど、そういう顔してた。

昼食後はかの有名な兼六園へ。確かに景色としてはかなり美しいところがあり、見ていて飽きないなと思うところはあったのですが、いかんせん人が多すぎました。隅っこの方を見ていても、視界の端にちらちらと人が入ってくるため、それが純粋な美しさを損なわせてしまっており、非常にもったいないと感じました。

そんなことを友人たちに話していたのですが、どうやら彼らはそういうことが全く気にならないようで、逆に「異常者」の烙印を押されてしまいます。なんで!?きれいな景色って独り占めしたくならないの!?そう抗弁しましたが、その意見すら受け入れてもらえず、さらに「人嫌い」の称号まで賜る始末。それでも僕は自分の意見を曲げることはしませんでした。こういうところは立派だと思います。やっぱ、どう考えても人がいないほうが景色は映えますからね。美しい。

 

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兼六園をぐるっと見終わると、次はお隣りにあった21世紀美術館へ。こうみえても僕は美術館に二、三回という途方も無い回数は行ったことがあるくらい、芸術に対して造詣がある男ですので、この美術館ではどのような絵画が拝めるのか、非常に楽しみにしていました。残念ながら有料エリアは長蛇の列ができており、諦めざるを得なかったのですが、それでも無料エリアが結構な広さで開放されており、十分楽しめそうです。

そんなわけで、目についたエリアに飛び込んだのですが、絵画のようなものは全く見当たりません。その代わりに何だか意図が良くわからないオブジェみたいなのがあるばかり。このあたりでようやく気がついたのですが、どうやらここは現代芸術と呼ばれるものをメインで扱っている美術館なようです。まあそりゃそうですよね、名前に「21世紀」とか入ってるし。

どうやら僕が期待していたような絵画などを拝むことは出来なさそうですが、それでも折角だからと館内を巡ってみました。すると、なぜだか分かりませんが、ある展示物の中に僕の大好きな漫画である「封神演義」の単行本を発見。テンションが上りかけましたが、よく展示物を見ると、それは全く意味がわからないというか、ぶっちゃけゴミの集まりにしか見えない、何も感じられないものだったため、テンションの代わりに何かがぶち上がってしまいました。

 

藤崎竜の傑作である「封神演義」を!!こんな訳のわからない作品に!!他のゴミと一緒に置いておくんじゃない!!というか、人様の漫画やらなにやらを並べるだけってどこが芸術なんだよ!?これだから現代芸術とかいうジャンルは嫌いなんだ!!芸術ってつければ何やっても良いと思ってんじゃねえぞ!!せめて自分の作ったもので勝負しろよ!!

 

生意気にも作者の情報が堂々と書かれていたため、僕はおもわず、主に新聞記事を用いた文書の作成、および投書などの行為に身をやつしてしまいそうになったのですが、それはただの気持ち悪いオタクにしかならないなと冷静に気がついてしまったため、思いとどまりました。我ながら大人になったなと感心してしまいました。

なんか悪口しか書いてませんが、もちろん良いところもありました。それが、「ふしぎな花倶楽部 中部花の輪いしかわ押し花 合同展」です。すごいクオリティの押し花が並べられている様は圧巻で、それでいて隣では作者であるおばちゃん達による体験会が開かれているという、親近感を感じさせる空間はまさしく芸術でした。あんなにも、花に見とれていたのは初めてのことかもしれない。

なぜ金沢に行ってまで、地元のおばちゃんが作った押し花を見ているのか、今考えるとまったくもって意味が分かりませんが、他の展示物がどうでも良すぎたのが大きかったのかもしれません。今の時代、非常にコメントしづらい存在へとなってしまったLGBTな方々の写真をひたすら展示してあるブース(壁一面にホモセクシュアルな方々の写真が貼られているだけで、見ている人達が何を楽しんでるのか一切わからない不気味な空間でした!)や、天井に大きな正方形の形に切り取られた窓のあるエリア(どうやら切り取られた空を楽しむ空間のようでしたが、どう考えても兼六園でみた景色の方が楽しかったのであまり心に響きませんでした)など、受け手がどう感じるか問いかけるようなものが多く、それが僕に合わなかっただけのような気もしますが。

あと、友人が提案した「勝手に作品の名前をつけ直す」という遊びが案外面白いものでした。一人一つずつタイトルを出し合い、互いに投票することで誰がセンスあるか競っていたのですが、あるものはギャグに走り、あるものは真っ当に良いタイトルをもってくる、思いつきで始めたにしては中々楽しめる遊びでした。

 

その後は一部の熱望もあり(主に僕)、近くの温泉へ。これが、湯涌温泉という場所だったのですが、どうやら「花咲くいろは」の舞台として登場していた温泉だったようで、自販機や銭湯にポスターがたっぷりと張ってありました。中には声優直筆のサインが書かれているものもあり、意味不明にもテンションが上ってしまっていました。21世紀美術館では抑えられていたはずが、やっぱり気持ち悪いオタクになってしまっていました。というか、僕は「花咲くいろは」を1話しか見てないのに、なんでテンションを上げていたのでしょうか。自分でも意味が分かりませんでした。

風呂を上がると良い時間になっていたので、そのまま夕食へ。金沢は海に近いこともあり、海鮮が美味いらしく、それは回転寿司であっても変わらないという情報を掴んでいた友人の勧めで、市街地にある回転寿司へ。正直、昼食のことがあったので、あまり期待はしてなかったのですが、昼間の店はなんだったのかと思うくらい、寿司は美味かった。普段あまり笑わない友人も寿司を頬張った途端、初めて見るレベルの笑顔を見せていたので相当な美味さだったのでしょう。こっちはそのへんの回転寿司とは比べ物にならなかった。

宿では昼間に買い込んだ酒を飲みながらダラダラと過ごしていたのですが、これがまた飲みやすく、ぐいぐいといけてしまいます。危うく意識が持っていかれるかと思ったのですが、翌日に運転が控えていることを思い出し、なんとか無事に就寝することが出来ました。僕は責任感の強い男です。

 

 

9/16(月)

 

この日は昼前にのっそりと起き出し、のどぐろ丼を食べに行きました。先に言ってしまうと美味いしか書くことが無いのですが、まじでのどぐろは美味かったです。こちらもかなりの有名店らしく、開店直後くらいに行ったのに、既に僕たちでのどぐろ丼が完売になってしまうほど、お客さんが殺到していました。

僕は普段、メジャーなものになびいてしまうと自分の中の大事なものが壊れてしまう、と未だに中学生のような考えを手放せないでいるのですが、今回の旅行で、「食事に関しては有名店に行くほうが良い」という、割と皆が実践していることに今更ながらに気がついてしまいました。あと、観光地はどんどん便乗してくるものだということにも、改めて気がつくことが出来ました。金沢からは金箔をのっけてりゃいいんでしょ?って空気を感じました。

 

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食後は大きく足を伸ばし、福井県東尋坊へ。道中に競艇場を見つけ、東尋坊よりもこっちに行ったほうが楽しいんじゃないかと盛り上がるどうしようもなさを存分に発揮した僕たちでしたが、鋼の意志で一路東尋坊へ。

男6人で東尋坊に行ったところで自殺くらいしかすることがないんじゃないかと思っていましたが、実際に行ってみるとこれがなかなか景色の良いところで、正に断崖絶壁といった装いの崖から波打つ日本海が見渡せ、遥かな水平線の果てまで突き抜けるような青空が広がっていました。嘘です。ほんとは結構雲が出ていました。ですが、それでも正直に言ってしまうとテンションが上りまくる景色でしたので、落ちないように細心の注意を払いながらも(落ちたら普通に死にます)、崖のあちらからこちらまで移動して写真撮影なぞにうつつを抜かしていました。

そうすると横から、最近の若者といった感じの連中がやってきて、ひょいひょいと崖から崖へと身軽に飛び移っていくではありませんか。彼らは命が惜しくはないのでしょうか。それを見ながら、「一人くらい落ちてくれたら面白いな、海がだんだん赤く染まったりするんだろうか」と実に不謹慎なことを考えていると、風に煽られて僕のほうが落ちそうになっていました。マジやべー。神様ってやつは見てる。

東尋坊では結構な長居をしていたのですが、これは別に「景色に見とれていたから」という高尚な理由ではなく、「競馬のメインレースの発走時刻が迫っているにも関わらず、まだ予想が固まっていないから」というどうしようもない理由からでした。どうやら近場の競艇場は躱せても、遠方の競馬場は躱せないようです。ちなみに、1時間くらい悩んだにもかかわらず、全員完膚なきまでに外れました。

その後は「海を眺めている後ろ姿」って格好いいのでは?という考えのもと、各々が海に向かってポーズを取りながら、交代で撮影を行うというなかなかに洒落た行いをしてきました。しかし一つ解せなかったことは、他の皆は今すぐにでも自分のアイコンとして使えそうなくらいバッチリ決まった写真になっていたにもかかわらず、僕の写真は「おや?自殺場所の下見に来たんですかな?」というくらい謎の悲壮感が漂う写真になっていたことです。他の写真もラリったキチガイが海に向かって叫んでるようなのしかありませんでした。

 

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「神様ってやつは見てるんだね」

「何の話?」

「私はやっぱり死ぬしかないんだよ。ここまで来て、やっぱりそう思うよ」

「死ぬしかないなんてことはないよ。こち亀両さんも言ってたよ。死のうなんて考えるもんじゃない。まずは生きる、そこからどう生きるかを探せば良いんだって」

「なにそれ。今更そんな言葉でやめると思ったの?両さんが言ってたからって何になるのよ」

「ごめん。たしかに今かけるような言葉じゃなかったね。でも君に死んでほしくないってのは本当なんだ」

「そう言われてもねえ。私はもう決めちゃってるわけだし」

「なんでそんなに死にたがるんだ?生きてりゃ良いことがあるとは言わないが、まだ経験してないことだってあるだろうに」

「別に今が楽しくないから死にまーす!なんて軽いノリで死ぬって言ってるんじゃないよ。ちゃんと未来のことまで考えて、それでもやっぱり、死ぬしかないなって」

「未来のこと?」

「そうそう。今が楽しくないのはもうどうしようもないと思うんだよね。でさ、一応未来のことも考えてみたわけ。それでもやっぱり、どうしようもないんだなって」

「何がどうしようもないのさ」

「全部だよ。大学行っても学びたいことなんてないし、趣味と呼べるものもない、やりたい仕事だって当然ない。それでも人は食べていかなきゃいけないでしょ?そのために無理やり仕事を探して、それを何十年も続ける。楽しみもないのに苦しみだけ味わうために生きるだなんて、生きていてもしかたないじゃない」

「…」

「私はさ、いい子じゃなかったよ。だからこんなになっちゃったのかな?なんて、こんなことも死ねば考えられなくなるのにね。いや、考えずに済むって言ったほうが正しいのかな?」

「君が死ぬ必要なんてないさ」

「なんで?なんでさっきから止めようとしてくるの?」

「要するにだ、君は今に退屈しているんだろ?そして、それがこれからも続くと思っている」

「そうよ、間違ってる?」

「ああ、間違ってる。間違ってるね。退屈なんてもんは、自分と周りの有り様でいくらでも解決できるんだ。俺が君を退屈から救ってやる」

「出来もしないのに簡単に言わないで!あなたに何が出来るっていうのよ!」

「簡単なことさ、今からだってそいつを示してやれる」

「どうして私を助けようとするの?私は死にたいって言ってるのに」

「言ってるだろう。君に死んでほしくない。君が好きなんだ」

「え…」

「まずは俺が君を救ってやる。この世は決して退屈なんかじゃない、それを教えてやる」

「…、一体何をしようっていうのよ」

「きっと俺は今この瞬間、君を救うために今まで生きてきたんだ。君がくだらないと思っているものにだって、命を賭けられるものが存在する、いまからそいつを見せてやる」

「だから、一体…」

「いいか!今から俺は君の代わりに飛び降りる!高さは相当なもんだが、下は海だ。うまく落ちれば助かるかもしれない。もし俺が無事にここへ戻ってきたら、もう二度と死ぬなんて言わないでくれ!」

「え…、ちょ…」

「返事は上がってから聞かせてくれ!君の退屈を解消するためにも、俺は飛ぶ。絶対に戻ってくる!それからまた、続きを話そう。それじゃあ!」

「だから待ってって!行っちゃった…」

 

 

 

「え…、海めっちゃ赤くなってるじゃん。あんだけ大見得きっといてマジ?なんか、救ってやるだの教えてやるだの、やけに上から目線だったのに、これはないわー。こっちの返事も聞かずに勝手に納得して飛び込んじゃうし、なにが返事は上がってから聞かせてくれだよ、あり得ない。」

「でもまあ、あんなのでも大人になれたんだよね。そう思うと、私なんてまだまだ大丈夫じゃん。それに今から死んだらあいつと心中したみたいで嫌だしね」

 

そういう救い方も、きっとある。

 

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