インターネットのけもの

全て妄想です。

たたかいのおわり

(続き)

 

会場となる雀荘には13人の選ばれし勇者が集っていました。事前の取り決めにより全員黄色い服装です。集団で歩くと変に目立つくらいは異様なグループだったと思います。

13と中途半端で不吉な人数なのは、基本的には全員が24時間(約27時間)打ちきるはずだったのですが、直前になって人数に変動があったため、時間で区切って参加できる人を交えつつ、常に三卓が稼働するように調整されていたためです。最終的な総参加者数は14人だったはずですが、そのうちフル稼働で打ちきったのが11人と、かなり精力的な方々が揃っていた事に終わった今でも驚きを隠せません。もちろん僕はフルで打ちきった内の一人です。

この争いでは各卓の一半荘ごとの順位による、入れ替え制を採用しておりました。一軍、二軍、三軍と卓をわけ、それぞれの卓で上位2名が上位の卓へ、下位2名が下位の卓へと回されるわけです。ただし、ここに一つの罠が潜んでいます。

この制度では、三軍で荒稼ぎをしニ軍で上手く負ければ、一軍で強い奴らと当たることなく点数を稼ぐことが出来てしまうのです。まあ実際は、そんな細かい調整ができるなら一軍相手でも十分戦えるような気がしますが、強い人同士はできるだけ固まっていてほしいものです。そこで追加されたのが三軍人権無視ルールでした。

 

・私語禁止

・飲食禁止

・タバコ禁止

・(一軍・二軍は個室なのに)オープン席で打たねばならない

・卓と椅子がボロい

・年貢精度採用

 

特に私語禁止でオープン席と言うのはなかなか辛く、個室から楽しそうな声が聞こえてくるたびに「自分はなぜこの場所にいるのだろうか」と、柄にも無いことを考えてしまったことをよく覚えています。しかもオープン席では24時間テレビを見ることが出来ませんでした。

年貢精度は三軍滞留を防ぐ最大の策で、言ってしまえば「三軍卓で打つと自動的に点数が引かれ(全員)、その点数は一軍卓で打っている奴らのところへ行く」というものです。三軍卓の住人が農民ならば、一軍卓の住人は領主様といったところでしょうか、年貢とは上手く言ったものです。

 

さて、この条件で24時間麻雀は始まるわけですが、打てども打てども中々進まない。24時間テレビの方でもランナーの発表を焦らされていたため、余計にそう感じたのかもしれません。ブルゾンちえみが走り出したのは一体いつのことだったでしょうか。

夕方から打ち始め、2時や3時を迎える頃には少し眠気もあったりしたものですが、その時点でもなお、1/3進んだかどうかといった有様。挙句、朝日を見る時間になっても周りから聞こえてくる声は「まだ12時間以上あるよ」という、先が見えない苦しみ。

しかし、そんな状況にあっても僕たちは楽しむことを忘れません。三卓開催の都合上、どうしても他より早く終わる卓が出てくるわけですが、そんな彼らが待ち時間に何をしていたかと申しますと、それは麻雀です。麻雀の待ち時間に麻雀を打っていたのです。それは一種の禅問答であったのかもしれません。

朝日が昇る時間が来ればビルの屋上から朝焼けを眺め、腹が空けば松屋で牛丼を食す。

そのうち僕は24時間麻雀を通じて得られたこの一体感を感じずにはいられなくなっていました。他の方もそうであってほしいと願います。

 

そしてとうとう終わりの時を迎えます。

誰かが言いました。「次が最終戦だ。」

 

時刻は日曜日の20時を少しまわったところだったでしょうか。最終戦はそれまでの成績が考慮されたチーム分けとなり、一軍卓は事実上の優勝決定戦となります。僕はそれまでに結構負けていたので普通に三軍に割り振られてしまいましたが、それでも最後となると気合が入ります。

24時間テレビもそろそろゴールを迎えるかというところで盛り上がりは十分です。まあ僕達三軍はテレビを見ることが出来ないので関係ありませんが・・・。

三軍卓の最終戦はあっさりとしたものでした。というのも、東一局で子の倍満が、続く東二局では親の倍満が同じ人に炸裂したからです。そんな連撃を耐えきれるはずもなく、東二局で飛び発生による終局で僕の24時間麻雀は幕切れを迎えました。ちなみに最後の親倍は僕が直撃させたものだったので、トータルで見るとかなりのマイナスではありましたが、割と気分良く終えることが出来ました。

 

その後は、圧倒的速さで終局したため、24時間テレビのマラソンのゴールシーンを皆で見ることが出来ましたし、24時間麻雀最終局のオーラスで役満炸裂という超激的なシーンにも立ち会えたので、疲れもなんのその、大満足でこの悪夢の終わりを迎えることが出来たのです。

トータル順位は10/14位と不本意なものではありましたが(点数に加えチップも20枚以上持っていかれていたので大敗北です!)、そこに後悔は一切なく、願わくばまたやりたいとそう思える良い麻雀でした。

 

次の日は何食わぬ顔で仕事が襲い掛かってきましたが、僕に出来ることはと言えばバレにくいように上手くサボることだけでした。楽しさの代償に得られた眠さと疲労は、到底一晩で回復できるものではなかったのです。

やっぱ普段の週末に24時間はおかしいよ・・・。