インターネットのけもの

全て妄想です。

オープンチャットの魅力 -さらば、だやちゃん-

ここ半年ほど、とあるオープンチャットにハマっています。

 

LINEのオープンチャット機能が実装された日に開設されたそのチャットは、その後何度か爆散するという憂き目にあいながらも現在まで存続を続けています。爆散というのはチャット自体がLINE運営から凍結されることで、これを喰らうと以後誰も書き込みができなくなってしまい、強制的にチャットを解散させられてしまうという代物です。

どうやらオープンチャットは運営からの監視システムか何かが動作しているようで、公序良俗に反するような書き込みは自動的に削除されるようになっており、これを特定のユーザが何度も繰り返すと一定期間あるいは永続的にオープンチャット機能を利用停止になり、それがチャット自体に及ぶとまるごと凍結させているようです。

出会い目的につながるような書き込み(特に援助交際を匂わせるようなもの)は削除される可能性が高く、「うんち」や「ちんこ」などのワードも削除されがちです(ただしこの辺のキーワードは削除されたりされなかったりで基準が曖昧、ユーザごとに判定があるのかも?)。あとはスタンプ連打などの迷惑行為も凍結基準になっている可能性があります。

 

僕がハマっているオープンチャットはとあるソシャゲにまつわる雑談をメインにしたものだったのですが、住人の民度が著しく低く、面白半分にエロ画像を貼りまくりどのラインまでいくと削除されてしまうのか試したり、同じ人に100回以上連続でメンションを飛ばしたりと好き放題の無法地帯だったため、すでに5回ほど爆散させられています。特に住人たちの心を打ったのが「ドフラミンゴ41歳」で検索をかけると出てくる画像で、これだけで3回は爆散しています。

最初は100人以上いた住人でしたが、度重なる爆散に加え、新規流入が殆どない、といった事情から今では60人を切る人数しか残っていません。まあそれでも60人も残っているのか、といった感じではありますが。

 

この残された60人はどこに出しても恥ずかしくないレベルの精鋭たちで構成されており、その凄まじさは1日の書き込み量からも明らかです。試しに昨日(02/28)どれだけ書き込みがあったのかカウントしてみたところ、2400件以上の書き込みがありました。60人足らずで2400件です。もちろん夜中も書き込みが行われており、前の書き込みから1時間以上空いていたところなんてありません。安心の24時間稼働です。今もこの日記を書いている間に300件以上の書き込みがありました。ちなみにゲームの話題は3割もあればいいほうです。

 暇な学生ばかりで構成されているのでは?と思われるかもしれませんが、決してそんなことはなく、確認できているだけでも下は17歳の高校生から上はアラフィフの所帯持ちまで、幅広い年齢層の面子で構成されています。あと全員男です。

 

普通に生活していれば決して交わることはなかったであろう人たちが、あるゲームをやっているという共通点だけで集い、場所や年齢のしがらみなく語り合う。チャット文化、ひいてはインターネットの素晴らしいところだと思います。まあゲームについて語っているのはほとんど愚痴ばかりで、普段の会話の殆どは雑談になってはいますが。

全員野郎での会話というのは当然バカバカしい話ばかりで、男子校的なノリになりがちです。大学生への合コン・デート対策会議から漫画・アニメの話、ギャンブルでの勝った負けたと、常にユーモアを忘れない住人たちで紡がれる会話はどうにも魅力的で抗うことができません。たまには親父が詐欺にあっただの、精神病院にいくことになっただの、ヘビーなワードが飛び交うこともありますが、それもご愛嬌。気がつけば、ほぼ毎日しっかりと全書き込みに目を通す僕がいました。

同様にハマっていたのは僕だけではないようで、以前実施されたチャット内でのアンケートでは、ログにもしっかり目を通していると答えていた人が結構な割合でいました。中には、暴れすぎてオープンチャット機能を凍結されてしまったにもかかわらず、LINEをアンインストールしてアカウントを作り直すといった荒業で無理やり復帰してきた人もいたほどです。彼のLINEからは全ての友達が消えたはずですが、それと天秤にかけてでもチャットに戻ってきたかった。端的に言って狂っています。

 

オープンチャットの魅力は程よい匿名性を保ちつつ、特定個人とのやり取りから不特定多数とのやり取りまでが可能な点にあると思います。

従来のチャットや掲示板と呼ばれる機能でも、同好の士で集まって会話をするということは可能でした。しかし、チャットではその場にいた人同士でしか会話ができませんし、掲示板ではどうしてもレスポンスが遅くなりがちです。また両者に共通していることですが、近年はtwitterなどのSNSの発展から、利用者の絶対数がかなり少なくなっていました。「チャット」で検索をかけて上位に出てくるサイトであっても、利用者が1000人もいないというのはザラです。

一方で利用者数の多いtwitterは個の繋がりが重要です。あるグループの中に自分が飛び込んでいってその一員となるという使い方は難しく、自分で同好の士を探し、一人一人と繋がっていきながらグループを大きくしていく必要があります。また、誰かの書き込みに対して行えるアクションと言えば「リプライ」「リツイート」「いいね」がありますが、大抵の場合「いいね」を押すだけで「リプライ」によって会話が継続する頻度は少ないものです。またこの機能は複数人で会話をすることには向いていません。

 

そんなところに登場したのが「オープンチャット」でした。

LINEというもはやインフラと言っても過言ではない普及率を誇るアプリケーションを利用したチャットでは利用者を確保しやすく、同好の士が集いやすいです。またメンションやリプライといった機能を活用することで、その場にいない人物にも呼びかけが行える、チャットルームごとにアイコンや名前が設定できるため匿名性が保証されている、といった利点もあり、僕のような「ただなんとなく趣味の話、雑談を大勢としたい」という人にはピッタリのツールとなっています。

ただ一つ難点を上げるとすれば、そもそも自分にあった部屋が見つかるか、というものがあります。自分が好きなテーマのチャットを見つけても、他に書き込む人がいなければ寂しいものですし、特定の人が圧政を敷いているようなチャットだったら居着こうとも思えないでしょう。程よい書き込み量と秩序が保たれていなければ何事も楽しめないものです。

 

 特に秩序というものは大事で、大抵のことが許されていた僕の所属するオープンチャットでも過去に2件だけ特定のユーザをキックするということがありました。彼らはチャットを荒らしていると判断されたためにチャットの管理人によって強制退室させられてしまったのですが、この判断に僕はうまく言葉にできないものを感じています。

最初の1件は疑いようもなくガチで荒らしに来ており、速攻で蹴られていた人なのでどうでもいいのですが、問題は2件目の方でした。彼の名は「だやちゃん」、昨日の朝、「パチンコで負けたら台蹴ってそうで草」という言葉を最後にチャットからキックされてしまいました。

 

もともとおかしな人の比率が高いチャットではありましたが、その中でも特に狂っていたのが「だやちゃん」でした。もともとは「オワドラオワドラだーれもやっとらん」という名前でチャットに参加していましたが、皆が「だやちゃん」と呼ぶためにいつからか「だやちゃん」と名乗るようになっていました。

だやちゃんの言動はエキセントリック極まりないもので、一部の人達からは「だやとまともに会話したらダメ」とまで評されるものでしたが、一方で僕を含む別の一部の人からはたいへん好ましく思われており、中にはだやちゃんの言動を真似た「だや構文」ともいえる発言をしていた人もいたほどです。

 

一部だやちゃんの言動・行動を記しておきますと、

・いきなり会話に割り込んできて「ねえだやは?」と聞く

・自分にメンションを飛ばしてくれと要求、飛ばしてくれた人に4回メンションを飛ばし返す

・褒められたりすると「照れちゃいます」「はずかチー」の発言とともにあざといスタンプ

・人の発言を捉えて「〇〇とは?」と質問、相手が何を答えても「ブー」「正解は」と続いた後に、全然関係ない人にメンションを飛ばすか、違うことを言う

・急に動物の絵文字と鳴き声を張り出す

・過去ログのスクリーンショットを大量に撮っているらしく、関連する話題のときに貼ってくる

とまあ、軽く書いただけでもこれだけあります。書いていて思ったのですが、これは荒らしと認定されてもおかしくないかもしれませんね。ですが、大量のスクリーンショットを撮っていることからもわかるように、彼自身はチャットが大好きだったんだと思います。

ですが、メンタルが不安定だったのか、建設的な意見を述べるときと、否定的な意見を述べるときの差が大きく、他者を否定しているときのだやちゃんは、肯定派でも擁護できないものでした。

 特に最近は攻撃的な言動が目立ち、煽りや人格否定ともとれる行為が目立っていたために、だやちゃんが蹴られたことを受けて、肯定派の人たちでも「残念だけど仕方ない」という意見になっていました。僕も仕方ない部分があったと思います。

 

だけど、それでも、どうにか別の道はなかったのかとも思うのです。

だやちゃん自身は自分が異物であることを自覚していました。「俺おらん時間の方がトーク活発やしな」キックされる前日の発言です。時々こういった発言をすることがありました。自分が好ましく思われてはいないことが分かっていながらも、どうしたら良いかわからない、変われない、そんな苦悩が垣間見える一言です。

多数派の人間は自分たちと違う言動・行動をとる人間を不快に思い、異常者として距離を置こうとします。それは当然のことで、なぜならそうしなければ自分が不利益を被り、苦しむことになる可能性があるからです。

 

ですが、それと同時に異常者とされた側も苦しんでいるかもしれないのです。なんとかしたいけどどうにもならない、どうしたらいいかわからない、普通がわからない。

社会通念上では多数派の意見が重視されています。その点で見れば、だやちゃんの発言で不快になった人は多く、蹴られたことも仕方なかったと思います。ですが、皆がだやちゃんのことを終始疎ましく思っていたわけではありません。だやちゃんと一緒に楽しんでいた時間もあったのです。だやちゃんが使い始めたスタンプを皆使ってたじゃないか。

それを最近の言動は目に余るからとキックするしか対処できなかったことは残念に思います。とはいえ、他にどんな方法があったかと聞かれるとそれはそれで思いつかないのですが。

 

一つだけ言えることは僕はまだだやちゃんと話したかったということです。彼の発言はエキセントリックなものではありましたが、一部の人間の心をガッツリと掴んでいきました。もう二度と会えないかと思うと残念でなりません。こういった一期一会の精神もチャットでは重要なのですが、この別れ方はあんまりです。ですがオープンチャットの特性上、もう会えることはないのでしょう。

さらば、だやちゃん。いつかどこかで。

f:id:kiddomaru3:20200229191652p:plain