インターネットのけもの

全て妄想です。

「キョロちゃん」感想

 

1ヶ月ほど前の日記にもちょろっと書いたのですが、ここしばらくの間、帰宅後は「キョロちゃん」をみるという生活を続けていました。以前の日記では月曜から金曜の5日間で26話まで見た旨を書いていたのですが、恐ろしいことにその後も殆どペースを落とすことはなく、昨日の時点で全91話の鑑賞が終了してしまいました。

1ヶ月で91話というと「まあそんなもんか」と思われるかもしれませんが、実際には休日は一切見ておらず、平日の20日間のみで91話を消化していたというのですから、我ながらこの継続力をもっと他の何かに活かすことは出来ないのかと呆れてしまうばかりです。あと、仕事終わりだと言うのに他にやることはないのかと悲しくなりました。

まあ見終わってしまったものは仕方ない、というか「キョロちゃん」のあまりの面白さの虜になってしまうのは当然のことなので、久しぶりに全話通しで見たこの僕が皆さんに「キョロちゃん」の魅力をわずかでも伝えていこうと思います。普段のアクセス数を鑑みると、壁に向かって話している痴呆老人のような真似をしているのと大して変わらないような気もしますが、ここは僕の日記帳なので好きなものを書いていきます。

 

 

キョロちゃん」と聞いて多くの人が思い浮かべるのはチョコボールでしょう。そのチョコボールのマスコットキャラクターであるキョロちゃんが主人公となり、1999年にアニメ化されました。それが僕がここのところずっと見ていた「キョロちゃん」です。

この「キョロちゃん」ですが、本編の内容にチョコボールはおろか、お菓子なども一切関わってこず(出てくることはあるが本筋に全く影響しない)、この歳になって販促という言葉を理解した僕にはどういった意図で作成されたのか全く分かりません。なんかWikipediaには"過去では、同じCS放送カートゥーン ネットワークでも森永製菓の提供で再放送されたことがある。"とか書かれてあったので、CM枠でうまいことやってたんですかね。放送当時から見ていたはずですが全然覚えていません。

現在はアマゾンプライムビデオで全91話を鑑賞することが出来るのですが、以前はたまにCS放送で再放送されるのを根気よく待つか、VHSで発売されたビデオシリーズかDVD-BOXを入手するしかありませんでした。ちなみに、再放送は2009年ごろにあったのが最後のようで、VHSなんか今更集めても再生機器があるか怪しい、DVD-BOXに至ってはプレミアが付きすぎて定価4万円が30万円オーバーという、めちゃくちゃ手が出しづらい状況が続いておりました。

こんな状況を思うと、ネット配信で見られるようになった今は大変便利になったものだなあと感じるばかりです。僕は放送当時からキョロちゃんのファンだったのですが、DVD-BOX発売時(2003年)はまだ小学生で、購入することはありませんでした。そもそも放送終了後2年以上経ってひっそりと発売されていたので、そんなものが出ていることすら知りませんでした。

 

肝心の内容についてですが、物語は冒険家であるマツゲール博士が、お話の主な舞台となるエンゼルアイランドでキョロちゃんと出会い、共に世界中を旅してまわり、キョロちゃんが再びエンゼルアイランドに戻ってくるところから始まります。

キョロちゃんよりも先に登場するマツゲール博士ですが、エンゼルアイランドに戻る道中で嵐にあってしまい、1話目にしてキョロちゃんと離ればなれとなってしまいます。導入部にだけいるキャラクターだったのかと思いきや、その後もちょくちょく現れてはいいセリフを連発していくので、視聴者もキョロちゃんと共にマツゲール博士の登場が待ち遠しくなってしまうことでしょう。

キョロちゃんは生まれてすぐにマツゲール博士と旅に出てしまったため、生まれ故郷のエンゼルアイランドでも友だちはおろか、知り合いすらいません。ですが、持ち前の素直な性格と高い社交性から、出会ったばかりのいたずらっ子パチクリくんと初めての友だちになります。そこから、パチクリくんの友だちである、おしゃまなクリンちゃん、物知りなミッケンくんともあっという間に友だちになってしまいます。キョロちゃんを含めたこの4人の仲良しグループが話の中心になることが多いです。

その後も無邪気なキョロちゃんは誰にでも積極的に話しかけ、親身になり、友だちを増やしていきます。そこに年齢や種族の差はなく、相手がたとえお爺ちゃんであっても、芋虫であっても、キョロちゃんは誰とだって友だちになってしまうのです。相手を怒らせてしまったなら謝り、拒まれていても真剣に相手のことを想う、そうやって相手の懐に自然と入っていきます。

子供であるキョロちゃんは色々失敗をすることだってありますが、その度に自分でなんとかしてみせたり、周囲からの助けを得たりして、困難を解決していきます。困難に直面しても決して凹んだままにならず、どう解決していくかという考えに切り替えて行くことが出来るキョロちゃんには見習う点も多いような気がします。いい歳こいて何言ってんだこいつと思われるかもしれませんが、僕も何言ってんだろと思います。

 

キョロちゃん」の魅力はキョロちゃんのキャラクター性だけに留まりません。登場する大人たちにも魅力がたっぷりと詰まっているのです。まあ全員が尊敬できるようなキャラクターではないのは当然なのですが、こういう生き方も楽しそうだなと思わせてくれるキャラクターが多いのです。完全に個人的な意見なのですが、尊敬できる大人が描かれている作品はいい作品だと思います。

普段は頼りないが誰かが困っているとすぐに駆けつけてくれる、やるときはやるグリグリ警部。ミッケンくんのおばあちゃんであるリンクルさんと散歩や日向ぼっこをしている、キョロちゃんたちに色々教えてくれるおじいちゃん、マクモーさん。いつも自由奔放で日々のお金にも困っているが、自分の考えを大切に過ごしているメグロさん。他にも魅力あふれるキャラクターが大勢出てきます。

彼らからは明確な意思を感じることが出来、このキャラクターならこうしてくれるだろうなと、容易に想像できるほどにしっかりと描写されています。彼らは大人としてキョロちゃん達に様々なことを教えてくれます。それは言葉として伝えられるものもありますが、行動を通して伝えられることもたくさんあります。良いことも悪いこともあります。そして、時には逆にキョロちゃんたちから大切なことを教わったりすることもあるのです。このような関係性をさらっと描くところに「キョロちゃん」の魅力があるのでしょう。

また、登場回数が少ないキャラクターであっても、キョロちゃんたちに何かを伝えてくれるようなキャラクターもたくさんいます。特に僕が好きなのは32話「楽しい怪しい薬屋さん」に登場したテンガンさんです。彼は詐欺師として指名手配されているのですが、皆が楽しんでいるのだからいいじゃないですかと、詐欺行為を全く悪びれるようなことはしません。それどころか、「世の中楽しいのが一番よ、覚えておいてね」とキョロちゃんに告げ、まんまと逃げおおせてしまいました。

ここだけ書くとただのクソ野郎にしか見えないかもしれませんが、彼は住民が望んだ薬(若返り薬)を面白おかしく、それも良心的な料金で提供していました。たしかに薬には効果がありませんでしたが、それでも住人は満足していましたし、何よりテンガンさんはもっと詐欺行為を働くことができる余地があったにもかかわらず、皆を楽しませたあとは詐欺行為を行っていませんでした。詐欺行為が判明したあとも、皆が喜んでいたことに満足すると、キョロちゃんに楽しかったかい、と問いかけました。キョロちゃんが楽しかったと答えると、それならよかった、と安心し、「世の中楽しいのが一番よ、覚えておいてね」と続けました。

その後キョロちゃんがマツゲール博士に送った手紙から察するに、住民の中には不満を持っている方もいたようですが、これもテンガンさんが考えていた皆を楽しませる手段の一つだったんじゃないでしょうか。一人あたりの被害金額は軽微なもの(500円とかそんなん)ですから、いずれは笑い話にもなるでしょう。手品なんかを交えつつ皆が求めていた薬を提供し(効果はなかったけど)、その嘘が暴かれたあとも皆の話題を集め、いずれ笑い話となる。あくまで皆を楽しませることが目的だったんじゃないかと思えます。

こんなふうにぽっと出のキャラクターに対しても、つらつらと文章を書き綴ってしまうくらいには魅力あるキャラクターが多いのです。軽く紹介したグリグリ警部やマクモーさんなんかは書き始めるとそれだけで一日の日記分くらいになりそうだったのであえて、軽く触れるに留めたほどです。ぜひ本編を視聴して彼らの魅力に触れてください。

 

キョロちゃん達が暮らすエンゼルアイランドにも書かないわけにはいきません。エンゼルアイランドはエンゼルマウンテンというアーモンドのような形をした火山を擁する島であり、そのなかのエンゼルフィールドというエリアを中心にキョロちゃんたちの物語が展開されます。

キョロちゃん」は子供向けアニメではありますが、社会情勢を反映している面も多く、総理大臣や選挙、銀行、裁判、絵画商法などをテーマにしたエピソードも割とよく出てきます。こういったエピソードはブラックユーモアを交えつつ展開されることが多く、「キョロちゃん」のWikipediaにジャンル:ブラックユーモアが付けられている理由の一つになっています。

まあブラックユーモアに関しては、話の最後のナレーションでしれっと「世の中は酷い犯罪が起きると、とかくその犯人の家庭環境にその答えを求めがちですが、案外そんなもの(悪いことをやると楽しい)かもしれませんね」と言い出すところにも原因があるような気がしますが。

このようにエンゼルアイランドは無秩序に住民たちが暮らしているわけではなく、警察も裁判所も銀行も通信販売だってある、現代社会とそう変わらない文化を持っているのです。しかしその一方で、宇宙人が訪れてきたり、雪だるまが意思を持ったり、不思議な力をもつ魔神がいたりと、ファンタジー要素もふんだんに含んでいます。この絶妙なバランスが物語に妙な説得力をもたらしているのでしょう。

宇宙人に関してどうしてもお伝えしたいことがあるのですが、なんとこの宇宙人の声優はあの釘宮理恵が担当しています。しかもTVアニメでのデビュー作だというのですからますます驚くことでしょう。本編(16話「宇宙人さん、いらっしゃい」)を見ればすぐに分かることですが、確かに釘宮ボイスでメンタマルちゃんというキャラクターが喋っています。あらすじにも「声が美少女という謎の生物」と書かれています。宇宙人なので謎の生物という書き方になっているのだと思いますが、実際には中々に刺激的なビジュアルをカマしています。

 

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釘宮理恵がTVアニメデビュー作で演じたメンタマル星人のメンタマルちゃん。これが本編開始30秒後に突如としてキョロちゃんの家に現れます。現れると言ってもノックをしてくるとかは一切なく、家の中から変な声が聞こえたキョロちゃんが階段を見るとメンタマルちゃんがいたという、視聴者からしても誰これ?と思わざるを得ない状況です。花の匂いがするおならをこき、ゴミの臭いを嗅ぐと元気になる、キョロちゃん以外には見えないという設定が衝突しまくっているキャラクターです。でも別れのシーンはBGMの影響もあってちゃんと悲しいのが凄い。

 

BGMに関して言えば、「栗コーダーカルテット」というリコーダー奏者4人組が担当しており、非常に落ち着いたBGMが中心になっています。バトル描写などが殆どないため、日常の楽しげな雰囲気がふんだんに伝わってきて自然に聞き入ることが出来るでしょう。悲しげなエピソードの際に流れるリコーダーの音色は落ち着きつつも、悲しさを助長させるようになっており、涙もろいひとなんかは思わず泣いてしまうと思います。

サントラも販売されていてオススメなのですが、1はまだAmazonなんかでも購入することが出来るのに対し、2は絶版になっており手に入らない状況です。一部のTSUTAYAでならレンタル出来るので、それでなんとかするしかありません。僕もレンタルしました。ちなみに一番好きなBGMは2に収録されている「愉快な仲間-お散歩」です。きっと誰にも伝わらないことでしょうが。

ちなみにOPとEDがそれぞれ2種類ずつ計4つあるのですが、これがまたどれも素晴らしい。1-26話までと27-91話までと、もうちょっとうまいこと配分出来なかったのかと思わずにはいられないタイミングでOPとEDが切り替わってしまっているのですが、初期のOPは作詞・作曲がつんくと、妙に力の入ったものになっています。もちろんですが、他の曲も負けず劣らずいいものです。特に後期EDである「キョロちゃん絵かき歌」は今でもソラで歌える程には印象深いものになっています。

 

まだまだ語るべきキャラクターも物語も大勢あるのですが、キリがないのでここらへんでやめておきます。と思っていたのですが、最後にシバシバについて全く触れていなかったことに気がついたので、もうちょっとだけ書きます。あ、あと魔神も書こう。本当にキリがない。

シバシバはエンゼルアイランドに出現する謎の怪物のことで、「シバシバ~」と口ずさみながら闇に紛れて現れます。島の子どもたちはシバシバの存在に怯えており、島内ではシバシバに関する儀式があるなど、ある種信仰の対象になっていることが伺えます。シバシバに会ってみたいと言っていたキョロちゃんも、実際に会った際にはかなり怯えており、視聴者側であった一部の子どもたちにもトラウマを植え付けていったと言われたりしています。

シバシバは現実世界であるエンゼルアイランドにも現れますが、基本的にはシバシバと出会った者ごと異空間のような場所に連れて行かれることが多く、それがまた恐怖を助長させています。ですが、シバシバから何かしらの危害を加えることはほとんど無く、大抵は一緒に踊ったりしているうちにいつの間にか現実世界に戻れている事が多いです。

60話でミッケンくんがシバシバになってしまいますが、これはミッケンくんの「こんな僕じゃない僕になりたい!」という願いを叶えただけであり、シバシバはむしろ皆を楽しませたい、皆と一緒に楽しみたいという思いを持っているんじゃないかと思われます。ミッケンくんが話していた言葉が全て「シバシバ~」に変換されてしまっていたことから考えると、シバシバも何か伝えたいことがあるのかもしれません。意思疎通も可能なようですし。ちなみに、60話ラストシーンのリンクルさんには思わず泣かされそうになりますね。ほんとあの婆さんは何者なのか。

 

魔神は手に収まるトーテムポールのような形状をしており、マクモーさん曰く「いい子のお願いは叶えるが、悪い子がお願いをするとどうなるか」といったもので、時間の魔神、変身の魔神、分身の魔神、真実の魔神の4体が作中に登場します。魔神の力は本物であり、例えば時間の魔神であれば、望んだ時間に戻り、過去をやり直すことが出来ます。

魔神に関するエピソードでは、たいていパチクリくんが無茶な使い方をして、もう懲り懲りだぜとなるのですが、キョロちゃんとパチクリくんが共にトラブルに巻き込まれることで、より友情が固くなっている側面も見られます。83話「真実の魔神」では、キョロちゃんとパチクリくんの友情を魔神が保証している場面があります。そもそも使い方が悪いだけで、毎回願いは叶えてもらえているので、二人共いい子として魔神に認められているのかもしれません。

26話「バイバイ!キョロちゃん」では、エンゼルアイランドの危機を救うためにエンゼルマウンテンへ向かったキョロちゃんのもとに、様々な障害が襲いかかるのですが、そこで出てくる遺跡や試練を出す相手のデザインが魔神のそれと酷似しています。

キョロちゃん」では世界観についての説明は殆どなく、それがシバシバに恐怖感を与え、どんなキャラクターが現れても違和感を感じさせないところがあったと思うのですが、遺跡を作った人たちが魔神を作ったのかとか、シバシバは何を伝えたいのかとか、色々と想像を巡らせるのも楽しいですね。

そもそもキョロちゃんは他のエンゼルアイランドの住人と違って、身体能力が異常に高く、出生からしても謎が多いです。魔神からも「茶色き玉の勇者」とか呼ばれていたことや、エンゼルボールを止めるためのペンダントを持っていたことなんかを考えると、遺跡を作った文明とキョロちゃんには何か関係があるのかもしれません。

 

 

なんか書いているうちに日付が変わってしまったのですが、ハッキリ言って僕のキョロちゃんに対する情熱はとどまるところを知りません。これ書きながらも好きなエピソードまた見てますからね。オススメのエピソードを挙げようと思ったけど多くなりすぎて困ってしまうほどです。今の気分だと23話「きらきら星の涙」ですかね。

キョロちゃん」をただの子供向けアニメだと思っていたら大間違いです。キョロちゃんの無邪気さもあって分かりにくくなっているところもありますが、彼らは悩み、考え、周囲との関係を構築しながら、問題を解決出来たり、出来なかったりします。ちゃんと丁寧に作られていることがよく伝わってきます。大人だって十分に楽しめるつくりになっているのです。むしろ大人になってからこそ見てもらいたい作品です。

 

よかったら見てね。見てください。見やがれー。まあいっか、じゃあね~。

 

 

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