働きだしてからというものの、夏休みの短さに恐怖を感じることしかできなくなってしまったため、そんな随分と貴重になってしまった夏休みを有意義なものにするべく、今年は夏休みの大半を東京で過ごすことにしたのでした。流石に家に引き篭もったまま夏休みを終えてしまうのはあんまりだと思ったからです。ですが実際には、泊めてもらった友人宅でamazonプライムビデオを見て過ごすだけという、それって東京に来た意味あるのかな?と思わずにはいられない一日もあったりしたため、僕は「人間の本質とはなかなか変化しないものだなあ」とどこか他人事のように、夏休みの目的をなんとか思い出そうとしたりしました。
なんとか「引き篭もらない」という目的は思い出せたのですが、よく考えてみると僕は観光地だとかそういう人が多いところに出てしまうと吐き気を催してしまうという奇病に犯されてしまっているため、ガイドに載っているような場所には行くことができません。かといって、そのへんの街中をぶらぶらしたところで別に買いたいものも食べたいものもありませんから、即行で飽きて家に帰ってしまう未来しか見えません。
八方塞がりに思われましたが、そこは流石といったところでしょうか、この現状を打破するナイスすぎる妙案を思いついてしまったのです。その妙案というのが「好きなアニメの舞台を見に行く」というオタク臭すぎるものだったということに我ながら呆れるばかりですが、よくよく考えてみると最近は「聖地巡礼」とか言って作品の舞台を巡るのが流行ってたりもしますし、思っているほどにはオタク臭くない…?のかな…?ちょっと前にもアニメ映画の聖地巡礼がどうのこうのと話題になっていたような気もしますし、ひょっとしたら同じように舞台探訪にきた可愛い子とお近づきになれてしまうかも…?
そんなわけで「NHKにようこそ!」の舞台探訪に行ってまいりました。オタク臭くないかもとか、可愛い子とお近づきにとかごちゃごちゃ書きましたが、どう考えてもオタク臭いし可愛い子と出会うこともないであろう作品であるところに混乱してしまいそうになりますが、好きな作品なんだから仕方ありませんね。そもそも、僕は未だに流行りものに流されないことが格好いいと思ってしまっているので、面白くもないのに流行っていて人が群がっている作品というのは大抵嫌いなのでした。
「NHKにようこそ!」は、大学を中退して引き篭もりと化した主人公、佐藤達広のもとに現れた天使のようなヒロイン、中原岬が佐藤くんを引き篭もりから救い出すためのプロジェクトに抜擢するところから始まる、どこか可笑しく痛い青春を描いた作品です。
原作小説、漫画版、アニメ版でそれぞれ少しずつ内容が異なっているのですが、今回はアニメ版の主な舞台となっている神奈川県多摩区生田付近を巡ってきました。
数字の順番に特に意味はありませんが、見つけられた場所を一通りマークしておきました。本当はもっとあったのかもしれませんが、今回見つけられたのはこれだけでした。
①
小田急生田駅の北口です。作中では「幾田」表記でしたが、建物の形は同じですね。佐藤くんのお母さんが訪ねて来た時に降りた場所ですが、佐藤くんと山崎が住んでいる三田ハウスは駅の南側なのでなれない街で間違えてしまったんでしょうね。でもプロジェクト卒業試験のときとかに映っていたのも北口だったのでその辺はあまり意識されていないのかもしれません。もしくは漫画喫茶に寄ったりしてたんでしょうか。
②
こちらが三田ハウス側にある南口です。舞台を巡ることを考えたらこっちから降りたほうがいいかもしれません。
③
一話で佐藤くんがバイトの面接に行く時に通った道です。作中とは異なり、階段に手すりが付けられていましたが、フェンスや階段自体の形状などからここで間違いないと思われます。折よく白い車が作中と似たような角度で駐車されていました。
三田ハウスから③に向かうまでにコンビニのある坂道らしき場所を通っていますが、これに相当する場所は見つけることができませんでした。似たような場所はあったのですが、そこにはコンビニやミラーはなく、その地点を経由して③に向かうとなると、変な遠回りをしていることになるので、違うのかなあと。まあコンビニは潰れた可能性がありますし、引き篭もりの佐藤くんが人目を避けて遠回りをしたとなれば辻褄は合うのですが。
④
ここも面接に向かうために通った道です。結構目立つので川沿いに歩いているとすぐに見つかりました。ここを登っていくと五反田神社という場所に出ます。佐藤くんも神社を通っていったのでしょう。
③から④に向かう場所も特定することができませんでした。というのも、ここは地図上でも分かる通り、一本道を行った後は五反田神社を抜けていくだけなので、他に通るような道はないのですが、当の一本道には該当する景色があるような場所は存在しないのです。仮に遠回りをしていたとしても、付近一帯からは似たような景色すら見つけることが出来ませんでした。
⑤
佐藤くんが通った場所としては⑥と前後しますが、シーンとしてはこちらの方が先に出ています。後ろにある建物も全てではないですが一致していました。放送当時は他の建物も含めて一緒だったのかもしれません。こういう問題は放送から年月が経ってしまった作品にはつきものですね。
⑥
この橋を渡ってから踏切を超えていったはずです。関係ないですが、川の水は思っていたよりも綺麗で臭みもありませんでした。うちの近所のドブ川とは大違いです。
⑦
そしてこの場所が岬ちゃんがバイトしていた漫画喫茶です。もうとっくに潰れてしまったようですが、建物自体は当時のままに残っていたのでその面影を感じることが出来ます。三田ハウスから駅前にかけては商店が少なく、バイトできそうな店もないため、佐藤くんはこの店を選ぼうと思ったのだと思われます。引き篭もりが電車に乗って移動するなんてのはハードルが高すぎますからね。途中からは難なくこなしていましたが。
もちろん漫画喫茶の向かいには佐藤くんと山崎が岬ちゃんを見張っていたあのガラス張りの建物もありました。実際に訪れてみると「これってバレバレなんじゃないの?」と思いもしましたが、意識しないと上の方なんてあまり見ないので、案外バレないものなのかもしれません。
位置関係としてはこうなります。この構図も作中に出てましたね。佐藤くんも山崎も見張るためとはいえ、よく見知らぬ建物に入っていけたものです。引き篭もりのくせに妙なところで大胆さを発揮します。
⑧
一気に駅前から離れましたが、ここが佐藤くんと山崎が住んでいる三田ハウスのある通りです。残念ながら三田ハウスのもととなった建物はとっくに壊され、今では別のアパートになってしまっていましたが、アパートはアパートということで雰囲気は感じることが出来ました。階段の向きが逆向きになっていなければもっと良かったのかもしれません。
⑨
岬ちゃんの家に通じる道です。作中と同じく坂道になっており、ここを登りきった場所に岬ちゃんの家のモデルとなった家がありました。どこからどう見ても完全に個人宅だったので写真を撮るのは憚られましたが、googleマップなんかでも見られるので、気になった人はそれで見たらいいと思います。ここに限らず、生田はどうにも坂が多い街で、引き篭もりには肉体的にも精神的にも移動が辛い街なのだろうと予想が出来ました。
登った先から見えた景色です。作中では公園があった場所は、実際には浄水場になっていました。おそらくですが、現実では岬ちゃん家からは三田ハウスも公園も見えないと思われます。
⑩
夜な夜なプロジェクトが進められていた第一公園です。作中で頻繁に登場する東屋はここにはありませんでした。この付近には公園が多く、いくつか他の公園も見て回ったのですが、東屋のある公園は見つけることができませんでした。全く別のところから持ってきたのかもしれません。ちなみに舞台探訪中、一番テンションが上がったのがこの場所でした。ベンチに座ってタバコを一服、とか思いましたが、季節柄蚊が非常に多く、断念してしまいました。少しでも佐藤くん気分を味わいたかったのですが…(岬ちゃんみたいな子が出てきてくれるかもしれないから)。
⑪
この看板を見つけるのはかなり苦労しました。公園付近の団地にあるらしいとは聞いていたのですが、いざ行ってみると公園の周りは団地だらけで、「公園付近の団地」はなんのヒントにもなっていなかったからです。しかもその情報自体も結構古かったため、こんなチンケな看板はとっくに撤去されている可能性もあり、疑心暗鬼に陥りながら団地を歩き回って「ちかんにご注意」と書かれた看板を探すハメになったのでした。正直、今日の日記はこの看板は未だにココにあるんだぞ!と伝えたいがために書き始めたと言っても過言ではありません。
⑫
ロリータコンプレックスに目覚めてしまった佐藤くんが小学生を盗撮するために潜んでいたというどうしようもない場所です。流石に大の大人が汗だくになりながら(⑪のお看板を探すためにめちゃくちゃ歩き回った)、小学校にカメラを向けるのはマジで捕まってしまうんじゃないかとビビってしまったので、この茂みだけを撮ることにしました。横断歩道の先に小学校の正門がありました。
舞台探訪中、なにか佐藤くんと岬ちゃんの出会いのような素敵な出会いがないものかと期待していましたが、全くそんな気配すらなかったため、思わず断崖絶壁に向けて走り出しそうになってしまいました。でも僕もドラマチックな死が相応しくないタイプだろうと容易に想像がつきますので、多分走り出したところですぐにコケてより惨めになってしまうだけだと思います。
舞台探訪中に限らず、この歳になるまで待ってもとうとう岬ちゃんは現れてくれませんでした。きっとこれからも現れることはないのでしょう。放送当時から考えると岬ちゃんももう30歳、原作で考えるともう34歳です。本当は僕も幻影を追い続けるのは止めにするべきなのでしょう。分かってはいますが、それでも希望を捨てることが出来ないのです…。
これこそが、N (日本) H (独り身) K (協会) の陰謀に巻き込まれてしまった僕の悲しい人生なのです。