インターネットのけもの

全て妄想です。

思い出のシチュー

一ヶ月ほど前の話になるのですが、「生徒会役員共コラボカフェ」というものに行ってきました。「生徒会役員共」というのは最近映画化もされた超人気作品のことです。気になって今調べてみたのですが、正確には「K×Pカフェ」というところでコラボメニューが提供されていただけのようです。どうやら僕は今までずっと思い違いをしていたようです。道理でコラボカフェのはずなのに店内に全然装飾がなかったわけだ。

そんなことはどうでもいいのですが、とにかく行ってきたのは確かです。メニューはコラボカフェにありがちな暴利を貪っているものではなく、普通の喫茶店レベルの値段で、品数も全5品とわりと手頃でした。まあ僕はこういうコラボカフェに来た事自体初めてだったため、基準はよくわからなかったのですが、よくネットでボコボコに叩かれているコラボカフェなどを見るに、ここはずいぶんと真っ当であったのではと思います。

 

扱う作品の割にはメニューはそこまで奇抜なものはなく、すこし拍子抜けしましたが、変に謎の白い液体とか出されていても、それはそれで困っていたので良かったのかもしれません。

メニューはシチューにたまご雑炊、ドリンク2種にデザート一品と、よくわからないチョイスで、それぞれのメニューにキャラクターの名前が冠せられています。しかし、出されているメニューは作品内に微塵も存在していなかったため、ぶっちゃけ「このメニューとこのキャラクターになんの関係が・・・?」とは思わずにいられませんでした。

そんなことを考えていても仕方ないので、何か頼むことにしましょう。とりあえず僕は好きなキャラクターの名前が冠せられたシチューと、主人公のドリンクを頼むことにします。ドリンクは単純に美味そうだったので頼みました。シチューは別にシチューでなくても良かったです。

 

ホールに出ている店員さんは一人しかいないらしく、おそらく厨房も少ないのでしょう、頼んでから中々出てきませんでしたが、しばらく待つと熱々のシチューとドリンクが運ばれてきました。

いざシチューを食べてみると糞不味かったです。いやー、ほんとびびった。一口食った瞬間に「なにこれ?」って思いましたからね。とろみはほとんどなく、白いシャバシャバした液体に、芯まで火が通っておらず生煮えの野菜たちが浮かんでいる。僕は自他共に認めるバカ舌のはずでしたが、そんな僕にも一発でまずいと分かる不味さ、衝撃的でした。

ドリンクの方に手を伸ばすと、こちらはめっちゃ美味かったので、余計にシチューの不味さに腹が立ちました。いや、ただシチューが不味かっただけなら僕は怒らなかったでしょう。

問題なのは、このシチューには僕の好きなキャラクターの名前が冠せられているということです。このために僕はこれから好きなキャラクターを、「でもこいつのシチュー不味いんだよな・・・」といらない設定を織り込んだ目で見なければならなくなってしまったのです。こんな理不尽を許せるはずがありません。というか、マジでなんで主人公のドリンクの方が美味いんだ。

 

怒り狂った僕が厨房に突っ込んでいったのは言うまでもありません。この間違った事実を認める訳にはいきません。あの子のシチューはもっと美味しいんだ!この僕の手で美味いシチューを作って歴史を矯正してやる!

と意気込んでキッチンに立ったのは良いのですが、よく考えるまでもなく、僕は料理ができなかったのですごすごと退散するしかありませんでした。うぅ・・・、ごめんよ、僕が料理できないばっかりにお前に「シチューが不味い」の称号を与えちゃったよ・・・。

店員さんは厨房から出た僕に何も言うこと無く、淡々と会計をしてくれました。

「ではお会計、1580円で~す!」

黙ってお金を払い、店を出ます。あとに残ったのはそう、あの子のシチューは不味い、そんな思いだけでした・・・。